脳コネクトミクスイメージング研究チーム|理化学研究所 生命機能科学研究センター(BDR)

脳コネクトミクスイメージング研究チーム

チームリーダー

林 拓也M.D., Ph.D.

脳の機能と構築と連絡性-脳コネクトーム-を解明

研究内容

脳の機能、構造、連絡性(脳コネクトーム)を理解するため、MRIやPETなどの神経画像技術の開発と高精度化をすすめ、行動、遺伝子、脳機能低下や回復を説明する神経回路を同定します。それらを診断、治療の困難な脳疾患の医療技術の開発に役立てます。
◯ 拡散強調MRI画像は最近になって撮像技術レベルが格段に向上しています。この画像法では水分子の拡散運動を強調したコントラストを呈しますが、脳の中では神経軸索の神経膜によって水分子運動の拡散運動制限が強く起きるため、線維の方向性や密度を視覚化する技術として期待されてきました。私たちは、拡散強調画像において神経軸索の生理学的モデルと大脳皮質のマッピング技術を融合することで大脳皮質表面の神経軸索特性の分布を可視化することに成功しました(Fukutomi et al Neuroimage 2018)。この技術によって神経軸索の密度と、神経軸索をとりまく髄鞘(ミエリン)を区別して可視化できるようになりました(下図01)。今後、神経軸索の疾患(神経変性症など)と髄鞘の疾患(多発性硬化症など)の鑑別、病態診断への有用性が示唆されます。

◯ タバコを吸いたいという欲求は、どこから生まれてどうやったら我慢できるのでしょうか。喫煙者の方は短時間なら喫煙を我慢できても、なかなか長期的な禁煙を達成できません。私たちは機能的MRI法という方法を用いて、喫煙できる状況(喫煙可能な場所か禁煙の場所かなど)を認知する背外側前頭前野、欲求や喫煙の価値付けをする眼窩前頭皮質との間の異常機能回路が、喫煙への依存と関与することを見出しました(下図02)。また経頭蓋磁気刺激法という一時的に脳機能を修飾する方法を用いることで、この異常機能回路を断ち切りタバコを吸いたい欲求が抑えられることを示しました。本論文は米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載され(Hayashi et al., PNAS 2013)、同誌ハイライトに選ばれました。

◯ 繁殖効率が高く遺伝子改変が可能なマーモセットは、実験用動物として神経科学や医学研究の分野で使われるようになってきています。このマーモセットを用いて私たちは高次認知機能の一つ「社会性」の解明を目指しています。脳内神経伝達物質のセロトニンは、ヒトでもうつ病治療との関連性が知られていますが、私たちはPETイメージングにより、マーモセット脳でもヒトと同様に皮質下構造物や皮質にセロトニンが発現していることを見出しました。また社会性に関わる行動特性3因子(攻撃性・不安・友好性)が大脳皮質内側面の異なる部位に表象されることを明らかにしました(Yokoyama et al. Cerebral Cortex 2013)(下図03)。大脳皮質内側面はヒトでも他人との関係や感情の制御に関わることが知られています。本動物モデルにより社会性の脳機構を調べるイメージング法を開発し、うつや自閉症などの病態理解に貢献したいと考えています。

研究テーマ

  • 脳コネクトミクスの可視化
  • 再生機構と脳内ネットワーク再構築
  • 可塑性機構と脳内ネットワーク再構築
  • 社会性機構と脳内ネットワーク・神経伝達物質機構

主要論文

  • Fukutomi H, Glasser MF, Zhang H, et al.
    Neurite imaging reveals microstructural variations in human cerebral cortical gray matter.
    Neuroimage S1053-8119(18). 30105-8 (2018) doi : 10.1016/j.neuroimage.2018.02.017
  • Morizane A, Kikuchi T, Hayashi T, et al.
    MHC matching improves engraftment of iPSC-derived neurons in non-human primates.
    Nature Communication 8. 385 (2017) doi: 10.1038/s41467-017-00926-5
  • Kikuchi T, Morizane A, Doi D, et al.
    Human iPS cell-derived dopaminergic neurons function in a primate Parkinson’s disease model.
    Nature 548. 592–596 (2017) doi: 10.1038/nature23664
  • Takenobu Y, Hayashi T, Moriwaki H, et al.
    Motor recovery and microstructural change in rubro-spinal tract in subcortical stroke.
    NeuroImage: Clinical14. 201-208 (2014) doi: 10.1016/j.nicl.2013.12.003
  • Yokoyama C, Kawasaki A, Hayashi T, et al.
    Linkage Between the Midline Cortical Serotonergic System and Social Behavior Traits: Positron Emission Tomography Studies of Common Marmosets.
    Cerebral Cortex 23(9). 2136-2145 (2013) doi: 10.1093/cercor/bhs196
  • Hayashi T, Ko JH, Strafella AP, et al.
    Dorsolateral prefrontal and orbitofrontal cortex interactions during self-control of cigarette craving.
    Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 110(11). 4422-4427 (2013) doi: 10.1073/pnas.1212185110
  • Hayashi T, Shimazawa M, Watabe H, et al.
    Kinetics of neurodegeneration based on a risk-related biomarker in animal model of glaucoma.
    Molecular Neurodegeneration 64(8), 594-601 (2010). 18(8). 4 (2013) doi: 10.1186/1750-1326-8-4
  • Hayashi T, Wakao S, Kitada M, et al.
    Autologous mesenchymal stem cell-derived dopaminergic neurons function in parkinsonian macaques.
    Journal of Clinical Investigation 123(1). 272-284 (2013) doi: 10.1172/JCI62516
  • Ikoma Y, Watabe H, Hayashi T, et al.
    Measurement of density and affinity for dopamine D(2) receptors by a single positron emission tomography scan with multiple injections of [(11)C]raclopride.
    Journal of Cerebral Blood Flow & Metabolism 30(3) 663-673 (2010) doi: 10.1038/jcbfm.2009.239
  • Takagi Y, Takahashi J, Saiki H, et al.
    Dopaminergic neurons generated from monkey embryonic stem cells function in a Parkinson primate model.
    Journal of Clinical Investigation 115(1). 102-109 (2005) doi: 10.1172/JCI21137

業績一覧

メンバー

メンバーリスト