
地球上の生命は、実に多様な方法で子孫を残しています。オスとメスが別個体として存在する種(雌雄異体)だけでなく、発育段階や環境に応じて性転換する種、さらには精子のゲノムを取り込まずにメスだけでクローンを残す雌性発生種まで、生殖様式は進化の過程で柔軟に姿を変えてきました。では、生命はどのようにして、これほど大胆に生殖様式を進化させることができたのでしょうか。
私たちはこれまでメダカ(図1)を用いて卵子形成プロセスを分子遺伝学的に解析し、「ゲノムを半数化する減数分裂」を駆動する分子経路と、「卵母細胞の成熟」を促す分子経路が、それぞれ独立した「機能モジュール」として働くことを明らかにしました。これらの結果から、配偶子形成という複雑な生命現象は、複数の機能モジュールの組み合わせによって実現されており、特定の機能モジュールをバイパスしたり、機能モジュール群を組み替えたりすることによって、新たな生殖様式へと進化しうると考えられます。
この仮説を検証するため当研究室では、メダカで得られた知見をもとに、雌性発生を行うアマゾンモーリーPoecilia formosa(図2)とその近縁種でオスとメスで生殖を行うスリコギモーリーPoecilia mexicanaを用いて、生殖細胞における各機能モジュールをマルチオミクス解析によって比較します。さらに機能モジュールのオンオフ制御の分子基盤を明らかにすることで、生殖様式の柔軟な進化を可能にした普遍原理に迫ります。
図1 雌雄異体のメダカ
図2 雌性発生種のアマゾンモーリーとその子供たち(母親のクローン)
主要論文
Kameyama S, Niwa T, Kikuchi M, Tanaka M.
Medaka Terb1 Mutant Displays Defects of Synaptonemal Complex Formation and Sexual Difference in Gametogenesis.
Zoological Science
41(3), (2024)
doi: 10.2108/zs230108
Kikuchi M, Yoshimoto M, Ishikawa T, et al.
Sexually dimorphic dynamics of the microtubule network in medaka ( Oryzias latipes ) germ cells.
Development
151(5), dev201840 (2024)
doi: 10.1242/dev.201840
Kikuchi M, Tanaka M.
Functional Modules in Gametogenesis.
Frontiers in Cell and Developmental Biology
10, 914570 (2022)
doi: 10.3389/fcell.2022.914570
Kikuchi M, Nishimura T, Ishishita S, et al.
foxl3 , a sexual switch in germ cells, initiates two independent molecular pathways for commitment to oogenesis in medaka.
Proceedings of the National Academy of Sciences
117(22), 12174-12181 (2020)
doi: 10.1073/pnas.1918556117
Kikuchi M, Nishimura T, Saito D, et al.
Novel components of germline sex determination acting downstream of foxl3 in medaka.
Developmental Biology
445(1), 80-89 (2019)
doi: 10.1016/j.ydbio.2018.10.019
メンバー
菊地 真理子
理研ECL研究ユニットリーダー




