誰でもカンタンに、安価に、複数の抗体での免疫染色を
2026年4月15日
凍結組織切片の免疫染色で、複数の抗体が同じ免疫動物由来であるために共染色できずに困ったことはないだろうか。例えば同時に観察したい抗体が、どれもラビット由来だったら……連続切片を使ってなんとか対処してきたかもしれない。あるいは多重免疫染色を可能にする特殊な機器やコンジュゲート抗体の価格を調べて、予算オーバーだと諦めたこともあったかもしれない。でももう諦めなくていい。誰でも簡単に、安価に、1枚の凍結組織切片に対して繰り返し免疫染色することで多重免疫染色を可能にするプロトコルをここに紹介する。
理研BDRの松口宗嗣 特別研究員(定量的細胞運命決定研究チーム)らは、反復間接免疫蛍光染色イメージング(4i)[1]を応用し、特殊な機器や試薬を利用せずに凍結組織切片サンプルで反復間接免疫蛍光染色イメージングを実施できるプロトコル「Cryo-4i」を開発した。本成果は科学誌 STAR Protocols に2026年3月20日付で掲載された。
2018年にLucas Pelkmans(チューリッヒ大学、スイス)らが発表した反復間接免疫蛍光染色イメージング(iterative indirect immunofluorescence imaging、4i)は、固定培養細胞に対して複数回の免疫染色を実施するための技術だ。4iは、比較的単純な染色と抗体溶出の操作を繰り返すことで、多数のタンパク質に関する空間的なデータを一つのサンプルから取得することができる非常に有用な手法である。しかし、これまで凍結組織切片に対する4iのプロトコルは存在しなかった。そこで松口らは、研究チームが上皮幹細胞の増殖・分化モデルとして着目しているマウス小腸の凍結組織切片を対象としてプロトコル開発に着手した。
凍結組織切片は短時間で作製でき、抗原性が高く保たれる利点があるが、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織切片と比較して剥がれやすく傷みやすいため、より丁寧に、かつ十分に抗体の溶出を実現させる必要がある。そこで松口らは、免疫染色に使うカバーガラスをあえてマニキュア等で密封せず、蛍光観察後はカバーガラスを洗浄バッファー中で自重に任せて穏やかに外すことで、凍結組織切片から抗体を溶出させ、複数回の免疫染色を可能にした。さらに撮影後の画像を解析するために、MATLABベースの解析プログラムもGitHub上で公開している[2]。このプログラムを利用することで、縦軸・横軸方向の微妙なズレを補正し、単一細胞レベルでタンパク質の発現や局在を解析できるようになった。本論文では5回の反復免疫染色によって10種類の標的タンパク質を検出できることを示している。また、少なくとも今回検討した抗体においては、反復免疫染色によって抗原性が失われず、何回目に染色しても基本的に同じ画像が得られることも確認している。
小長谷チームディレクターは、本研究に込めた思いを次のように語る。「Cryo-4iを開発するときには、日常的に免疫染色を実施することを考えて、高額な機械や試薬を必要とせず、安価な試薬のみで実施できるプロトコルにすることを目指しました。共染色するターゲットの数が数種類から十種類程度とそれほど多くなく、仮説検証目的で、免疫染色をルーチンでたくさん回したい人にオススメです。私達はまだ試せていませんが、このCryo-4iは他の生物種や腸管組織以外でも利用できる可能性があり、また5回以上の反復免疫染色も可能ではないかと思います。入手が困難な希少組織サンプルの活用にも有効かもしれません。今後は多くの生物・医学系の研究室でこの方法を広く使ってほしいなと思っています。」
高橋 涼香(BDR・広報グループ)
参考文献
参考リンク




