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タンパク質摂取と健康寿命の関係を探る霊長類モデルの開発

2025年12月12日

寿命を延ばしたい。老化を抑制したい。それは古代エジプトのクレオパトラや秦の始皇帝を始めとして、古代から人類が夢見てきたことだ。それが「腹八分目」で達成できるかもしれないということが、近年の研究で明らかになってきた。ショウジョウバエやマウスを用いた研究では、食餌で摂取するタンパク質やある種のアミノ酸を制限すると、寿命が延びたり、老化に関する指標が下がったりする。そうなると知りたいのは、ヒトではどうなの?ということだ。

理研BDR栄養応答研究チームの大学院生・藤田有香さん(京都大学大学院生命科学研究科)は、霊長類モデル動物コモンマーモセットを用いてタンパク質および単一アミノ酸制限を行うことができる栄養実験系を開発し、低タンパク質餌の摂取によって寿命の延伸や老化の抑制に関与する血中のFGF21(線維芽細胞増殖因子21)量が増加すること、その影響がアミノ酸の添加によって打ち消されることを明らかにした。本成果は科学誌Scientific Reportsに2025年8月23日付で掲載された。

腹八分目生活で寿命が延び、老化が抑制されるのはなぜか。マウスを用いた研究ではタンパク質やアミノ酸の制限によって肝臓から分泌されるFGF21というホルモンが体内で上昇し、寿命が延びたり、さまざまな老化の指標が改善したりすることが明らかになっている[1]。一方、霊長類でも、食事制限によって代謝が増強され、長寿の指標が改善するかもしれないと報告されている。では、マウスの体内で起こっていることは、同じように霊長類の体内でも起きているのだろうか。

霊長類で食餌を制限する研究は、げっ歯類と比較して餌の量や値段の点から細かな栄養制限実験を実施することが難しかった。そこで藤田らは、比較的小さい霊長類モデル動物であるマーモセットに着目した。まず、一般的に利用されているさまざまなマーモセット用餌における炭水化物、脂肪およびタンパク質の含有量を調査し、通常の餌条件を炭水化物54.7%、脂質11.2%、タンパク質34.2%と定義した。一方、低タンパク質餌では炭水化物83.1%、脂質11.2%、タンパク質5.7%とした。両方の餌でタンパク質にはカゼインのみを利用した。

通常餌で飼育したあと、低タンパク質餌に切り替えると、1週間後にはマーモセット血中のFGF21量が増加していた。さらに、血中の遊離アミノ酸やアミノ酸代謝物の量も低下しており、マウス等で観察されることと同様の結果となった。次に、低タンパク質餌とともに精製した遊離アミノ酸群(アミノ酸組成はカゼインに一致)を5%、15%、25%と添加していくと、15%添加したところで低タンパク質餌によって誘導されたFGF21の増加や血中遊離アミノ酸の減少が緩和された。この結果は、マーモセットにとって十分であると認識されるアミノ酸量が、遊離アミノ酸を15%添加した餌に含まれている量に相当することを示す。今回作成した低タンパク質餌に遊離アミノ酸を添加したエサは、霊長類に対して、20種類あるアミノ酸を単一レベルで食餌制限介入ができる汎用性の高い実験系であると考えられる。

藤田さんは、「今回の餌を使うことで、マーモセットの食餌中の20種類のアミノ酸を自在に操作できるようになった。例えば1種類のアミノ酸を制限するにしても、制限の程度、残りの19種類のアミノ酸の組成などを精密にコントロールできる。今回の研究が、長寿を紐解く発見につながることを期待したい。」と語る。また、栄養応答研究チームの小幡史明チームディレクターは「何をどう食べれば健康でいられるのかは、複雑な生命システムの理解に基づく精緻な研究と考察が必要である。マーモセット栄養学を活用しながら、ヒトの研究への展開を目指したい。」と話す。今後の研究の進展に注目したい。

高橋 涼香(BDR・広報グループ)

参考文献

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