田中 信行
理化学研究所 生命機能科学研究センター バイオコンピューティング研究チーム 上級技師
小さい頃からの機械好きが高じてロボットを作れるようになるべく鈴鹿高専(鈴鹿工業高等専門学校)に入学。大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻を卒業後、医工連携の流れの中で東京女子医科大学先端生命医科学研究所で研究活動をする。表面物性の研究から「細胞の濡れ」計測装置を開発するなど、工学的な観点から生物学に向き合う。趣味は、ランニング、登山。フルマラソンは3時間を切る俊足。集めているものは、手ぬぐい。
高専からBDRに来て自動化を研究している芝井さんから紹介されたのは、高専出身仲間だという田中信行さん。田中さんには以前「濡れ」を測る装置を見せていただいたことがあるんですが、今回はいきなり微細加工用クリーンルームに案内されました。
理化学研究所 生命機能科学研究センター バイオコンピューティング研究チーム 上級技師
小さい頃からの機械好きが高じてロボットを作れるようになるべく鈴鹿高専(鈴鹿工業高等専門学校)に入学。大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻を卒業後、医工連携の流れの中で東京女子医科大学先端生命医科学研究所で研究活動をする。表面物性の研究から「細胞の濡れ」計測装置を開発するなど、工学的な観点から生物学に向き合う。趣味は、ランニング、登山。フルマラソンは3時間を切る俊足。集めているものは、手ぬぐい。
(田中▷)ガウンに着替えてから入ってください。部屋の中にチリが入らないようにしているんです。部屋の中には微細加工の設備と微小計測の機器がそろっています。わかりやすいところでいうと顕微鏡類、特に物体の表面の形状を測定するデジタル顕微鏡ですね。こちらのAFM(原子間力顕微鏡)はタンパク質の構造や生体分子の運動を観察したりします。
リソグラフィの装置です。光と電子線を使って、物質の表面を露光させることでパターンを形成するためのものです。光には回折限界といっておおよそ波長より小さいものは作れないという性質があるので、うちでは大体1μm以下のものを作る場合は電子線を使っています。
細胞を一つだけ閉じ込めたり、細胞を1列に並べる、シートを作るといったことを空間的に制御するためのマイクロデバイスを作ったりします。
そうです。スケールがものすごく小さくて、チリや温度、湿度なんかが非常に重要になってくるので、クリーンルームなんです。カメラや音のセンサーもあります。
さすがに24時間この中にいるわけじゃないので、装置トラブルでアラームが鳴った時とかわかるように、です。
では、次の部屋に行きましょう。
研究の自動化というテーマでも研究しているので、この部屋には実験自動化用のロボットがあります。
これは96穴プレートにシールを貼るロボ、こっちはその貼ったシールを自動で剥がすロボです。ピーラーともいいます。その隣は、自動の遠心機。ここにプレートを置くと、ヒュッと中に取り込まれてあとは自動で遠心分離してくれます。
そうです。今はそれぞれの装置の連携を取るための準備をしているところです。大阪大学からプログラミングが強い学生さんが来てくれていて、制御ソフトの開発をしています。通信で動かすんですけど、うまく通信できるかどうかなど、通信プロトコルを工夫しているところです。
それがうまくできていて。ここに剥がすときに使うシールのロールがあるんですけど、プレートが入ってくると、このシールをペタっと剥がしたいシールの上に貼るんですよ。そのあと、横向きに巻きとっていくとうまくペロペロとめくれていく仕組みです。
このロボたちはいわゆるロボットっぽい形じゃなくて、ある機能や役割に特化したものですが、もちろんロボっぽい腕のロボもあります。
でしょー。こいつがまた健気に働いてくれるんですよね。しかもカワイイだけじゃなくて、この腕型ロボは非常に量産化に最適化されているように思います。おそらくメーカーがターゲットにしているのは、工場とか数百台単位で使うところなんだろうと思います。
日本だと製造業ということになるでしょうね。けど、欧米だといわゆるメガファーマと呼ばれるところが、実験自体をオートメーションするというのは随分前からやられています。なので、ライフサイエンス用の自動装置やロボットというのも開発が進むんです。日本にはドラッグラグと呼ばれる新薬の承認の内外時間差がありますが、ラボオートメーションラグともいえるものもあります。
実際作れると思いますよ、東大阪なんかの技術力があれば。でも彼らは日本にそういうマーケットがあると認識していないので、参入してこないんですよね。
装置が外国製だと、インテグレーションもかなり自前でやる必要があるので、大変ですね。
結局、海外に問い合わせることになるので、どうしても遅れがある現状です。あと、規格の問題もあります。
装置やロボは多岐に渡りますし、開発を進めているラボもたくさんあります。そういう多様性を認めつつ、多くの取り組みをスムーズに結ぶための標準化が必要です。
そうですね。あるプロジェクトでアンケートを取ったことがあるんですが、「自動化の技術があるのはわかるけど、どう活用したら良いかわからない」「どういうメリットがあるのかわからない」と言った意見がかなりあったんです。
そこで、科学的興味や課題などお聞きして、効果的な自動化のソリューションを提案しています。もともとはロボット工学の研究室にいて、「医工連携」の一環で医学部に行って、今はライフサイエンスの研究所にいます。なので、サイエンスとテクノロジーの橋渡しができたらいいな、と思っています。
ライフサイエンス系では、技術はツールとして使うことが多いので、自分が持っているアセットや知見などを出し惜しみせずお話ししています。とはいえ、自動化には別の側面もあるようにも思うんですよね。
たとえば、生物学の実験だと、何日目にこれします、何日目にあれします、ということを決めて実験を進めますよね。でも、この「日」というのは、人間の決めた単位ですよね。
細胞にとっては週末なんて関係なくて、ある遺伝子が発現したら次に進む、ということなんじゃないかと思うんです。しかも、彼ら細胞はそんなルールを定義すらしていない状態で、自律的、自発的にいろんなことを起こしている。これが彼らの自然な状態なんじゃないかと思うんです。
人間が介在していることで、本来の状態とは別の結果を産んでいるのかもしれない、とも考えられます。自動化や自律化を進めることで、人間が介在しない、より自然な状態で実験を行うことができる可能性があると思うんです。
生物はいろんなことに適応していくのですが、実験に使う細胞も餌(培地や成長因子)を与えられ続けて、それに適応しているので、それはある意味、家畜化しているとも言える。観察していること自体がすでに介入だ、という話が昔受けた物理学の授業であったような朧げな記憶が蘇ってきました。人間が介在することですでに自然の状態ではなくなっているとしたら、自然観察はどうあるべきなのか、考えさせられました。
理研OBで現在は神戸を中心に活動する事業開発人。分析化学、光学、バイオテクノロジー、ITなど幅広いバックグラウンドを持つ。理研をはじめとするアカデミアの技術・アイデアを事業にするため、アイデアを共有する場の開催から、資金調達、事業戦略立案など、さまざまな活動を行っている。
2025年10月1日 BDRニュース
BDRの研究ネホリハホリ
左右非対称性から広がるロマンの話
石橋朋樹 基礎科学特別研究員 物理の研究室で生物の謎を解いてる人で、難しいことをおもしろく話してくれるよと太鼓判を押されたので、ネホリハホリしてきました。
2025年7月8日 BDRニュース
BDRの研究ネホリハホリ
研究室を支える屋台骨
木下聖子 アシスタント このシリーズ初のアシスタントさんですが、キャリアのほとんどを研究室アシスタントとして過ごした筋金入りだとか。研究室アシスタントという仕事について、ネホリハホリしてきました。
2025年6月13日 BDRニュース
BDRの研究ネホリハホリ
前立腺の発生をオルガノイドで
宇野亘 特別研究員 オルガノイドを使って器官の発生過程を研究している宇野さん。所属研究室のチームリーダーからは腎臓の話をよく聞くので、腎臓の話かなと思っていたら、現在はもっと研究の対象が広がっているようで...