髙里 実
東京都武蔵野市出身。大学時代は合気道に打ち込む。腎臓っぽいもの(腎臓オルガノイド)を作る技術を開発し、最終的には、移植可能な腎臓を作製することを目指している。最近の趣味はベランダ菜園(トマト・ナス・オクラ・レタス・カブ)。オルガノイドをつくるより手間がかかる。
初めはインタビューするテーマを何にするか悩んでいました。メンバーの中でアイデアを出し合った中に、「移植」や「臓器は作れるのか」というテーマが入っていました。 みんなが興味を示したそれらのテーマを結びつけ、具体化する中で理化学研究所に「人工腎臓」(オルガノイド)を作っている研究者の方がいらっしゃることを聞き、「腎臓は作れるのか」というテーマでインタビューすることを決めました。質問内容は腎臓の機能に関わることや腎臓を作ろうと思った動機、腎臓移植に関することなど多岐に渡りました。
東京都武蔵野市出身。大学時代は合気道に打ち込む。腎臓っぽいもの(腎臓オルガノイド)を作る技術を開発し、最終的には、移植可能な腎臓を作製することを目指している。最近の趣味はベランダ菜園(トマト・ナス・オクラ・レタス・カブ)。オルガノイドをつくるより手間がかかる。
大学院生のときに、人体の発生とその仕組みについて勉強していました。お父さんとお母さんからできた受精卵が、お母さんの体内で形づくられ、人間の形になっていく過程を「発生」と呼びます。すべての細胞は、たった一つの細胞からさまざまな臓器を作り出していくのですが、この不思議な現象を科学的にどのように説明できるかを明らかにする研究を、大学院生のときに行っていました。その中で、たまたま腎臓の発生、つまり赤ちゃんの体の中でどのように腎臓ができるのかを研究していました。その知見をiPS細胞に応用し、iPS細胞から腎臓を作ることに挑戦しました。受精卵から腎臓ができる仕組みをそのまま真似すれば、培養皿の中で腎臓を作ることができるはずだと考え、実際に試してみたのがきっかけです。
腎臓にはネフロンという構造が1つの腎臓に約100万個あり、両方合わせると200万個存在します。赤ちゃんの頃はすべてが機能していますが、加齢とともに数が減り、20万個を下回ると血液を浄化する能力が足りなくなり、人工透析が必要になります。その背景には、腎臓には幹細胞が存在せず、自己再生ができないという特徴があります。150年前は寿命が短く問題なかったのですが、寿命が延びた現在では人生の後半でネフロンが不足してしまいます。長寿の日本では腎移植を希望する方が非常に多く、移植される臓器の中でも腎臓が最も多いです。しかし、実際に移植を受けられるのは毎年0.1%ほどで、待機期間は10年以上に及ぶこともあります。移植は主に生体腎移植が多く、家族や友人から提供を受けるケースが中心です。
現在のiPS細胞は、自分の体から取り出した細胞からiPS細胞を作りそれを色々な細胞に分化させているので、基本的に免疫拒絶などの副作用が起こる可能性は少ないです。また、免疫細胞は細胞の表面にあるHLAというタンパク質で自分自身の細胞かどうかを判断しています。もし、自分の細胞でないと判断した場合攻撃する仕組みになっており、その結果、免疫拒絶などが起こったりします。このHLAは人によっては他の人と似ていることがあり、特に日本は島国ということもあってHLAにあまりバラツキがありません。なので、約50種類のiPS細胞があればおおよそ日本人の7割以上は50種類の中のどれかに適合すると言われています。つまり、自分の細胞で作られていなくても、100%ではないですが拒絶されないようなiPS細胞を選ぶことはできます。
残念ながら、実用化までにはまだ複数の壁があります。その中の一つに、大きな腎臓を作ることが挙げられます。今の段階ではまだとても小さなものしか作れていません。大きなものを作ろうとすると、どうしてもそれを育てて移植まで研究室で生きたまま保存しておく技術や機械が必要になります。臓器を生きたまま保存するには、血液や心臓など人間の循環器系を再現しなければなりません。ですが、今の人類にはまだ人間の循環器系の仕組みを詳しく解明できていない所もあり、再現できていないのが現状です。また、作成した臓器をどのように循環器系に繋げるかについても引き続き研究を続けていかなければなりません。
自然現象を人間が理解できる形にすることが研究者の仕事です。自然現象の観察結果を、誰もが見てわかる(再現できる)ように言語化することが、研究者の仕事だと考えています。教科書にあることは100年後には変わっているかもしれません。だから常に疑問を持つことが大切です。また、明かされていない真実を探究することが人類の役目であるとも思って研究に取り組んでいます。
髙里実先生は「腎臓をどうすれば作れるのか?」と素朴な疑問を抱えていた私たちに、オルガノイドをはじめとする腎臓を人工的に作る過程などを、私たちでも理解しやすい形で丁寧に教えてくださいました。そのため、私たちも探究心を持ってインタビューをすることができました。特に、研究者の仕事は、世の中の森羅万象をすべての人が理解できる形に言語化するという、ある種の翻訳家のような側面を持っていることを学びました。この経験を通して今後、私たち自身も目の前の課題を深く掘り下げ、常に疑問を持ち、未知の真実を追い求めていきたいと強く感じました。また、研究者としての努力や苦労、やりがい等も真摯に話してくださる姿勢から学ばせていただくことも多かったと感じています。「未来や地球のためになるような研究をしていきたい」とおっしゃっていた髙里実先生と、貴重な時間を過ごすことができ、光栄に思います。(このインタビューは2025年3月24日に行われました)
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