内田 唯
理化学研究所 生命機能科学研究センター 多階層生命動態研究チーム 基礎科学特別研究員
メダカの研究をしていたが、大学院の時にセミナーで古澤チームリーダーの話を聞いてこの人だ!と思い、理研へ。小さい頃から生き物は好きで、現在はヒョウモントカゲモドキ、フトアゴヒゲトカゲ、コーンスネーク、ニホンヤモリ(大勢)、ウーパールーパー、蟻(大勢)を飼育中。
今回は、理研BDRで恐竜の研究をしている江川さんからのご紹介で内田さんにインタビューをしました。体がどうやってできるのかということを進化と発生の観点から研究されているそうですが、どうやら研究対象がメダカだそうで、まずは水槽のあるお部屋へ…。(聞き手:薬師寺秀樹)
理化学研究所 生命機能科学研究センター 多階層生命動態研究チーム 基礎科学特別研究員
メダカの研究をしていたが、大学院の時にセミナーで古澤チームリーダーの話を聞いてこの人だ!と思い、理研へ。小さい頃から生き物は好きで、現在はヒョウモントカゲモドキ、フトアゴヒゲトカゲ、コーンスネーク、ニホンヤモリ(大勢)、ウーパールーパー、蟻(大勢)を飼育中。
棚の半分はメダカで、残りはゼブラフィッシュという生命科学ではよく使われる生物です。
実は、近交系といって遺伝的な状態が近くなるように交配していった系統がメダカにはあるんです。でもゼブラフィッシュには近交系がないんです。
そうです。
そうです。メダカは夫婦仲が良いんです。こうしていると、毎日卵を産んでくれます。
それが卵です。見てみます?
その毛が水草とかに絡まって、流されないようになってるんです。
しかも結構硬いんですよ、その卵。ピンセットでつまんでみてください。
ピンセットで挟んでも割れないし、むしろ潰れないので、操作は結構、気が楽ではあります。
進化しやすさというのに興味があります。例えば、イヌってけっこうサイズが変わったり、模様が変わったりしますよね。トリも頭の羽根の模様が変わったり、身体のサイズとか、ちょっとしたプロポーションはバラバラです。でも、骨格の構成だったり、基本的な器官とその配置とかは共通しているんです。例えば哺乳類だと、キリンのように長くても、アザラシのように短くても、首の骨は原則的に7個です。
そういった変わらない部分と、そうでない部分。進化しやすい部分、多様化してきた部分と、変わらず保存されてきた部分の違いがどういう法則や性質で説明できるんだろう、というところが、興味の対象です。
動物の系統樹を描くと、「門」とか「目」とかありますよね。この中では門が一番大きなグループで、それぞれの門の中で共通している形質があるのでサブグループとしてまとめて綱、目とかになります。さらにこの中にも共通した形質があって科、属になっています。
この動物門という系統の中で共通に持っている解剖学的な特徴をボディプランと呼んでいます。そのボディプランの一部の形態セットは、同じ門に属するグループの中で進化の中ですごく極端に保存されているんです。 最近出した論文ではそこに注目して、ボディプランはなぜ保存されてきたのかというのを取り出して研究しています。
そのために、発生を使うんです。
「発生は体を作っていくプロセスなわけですが、実は進化の過程で作られてきたボディプランをなぞることになります。脊椎動物のボディプランを作る発生段階というのがあるんですけど、ラッキーだったことに、先行研究で、脊椎動物の、例えばマウスとか、エイ、カメ、カエル、ニワトリ、魚の中で、それぞれのボディプランを作る時期の、形態とか遺伝子発現パターンがすごく似通っているということが分かりました。ということは、なぜボディプランが保存されているのかという問題が、なぜボディプランを作る発生段階が保存されているのかという、発生の問題に置き換えることができるんです。
発生中のそういう共通性の高い時期ですね。脊椎動物のどの系統でもどの種でも持っている形質がまさに作られているんですね。
例えば、魚とマウスで比べて保存されている、一番近い発生段階がボディプラン形成期だったというのが分かっています。あと、カエルとカエルとか、魚と魚という、さらに狭い系統の中で比べてみても、やっぱり一番保存されている、一番類似している発生段階が、ボディプラン形成期だったというのが実際明らかになっているんです。
肩甲骨がカチあったりするから難しかったんじゃないですかね。発生過程がなぜ・どのように変更しづらいのかはよく分からないですが…。
発生システムの中にも変わりやすいところと変わりにくいところがあるんじゃないかという仮説を立てています。
例えば、右手と左手は大体対称ですけど、完全に対称じゃないですよね?
そういう揺らぎがあるんです。ゲノムに変異が入った時に変わりやすい形質は、そもそも不安定性が高く、そうでない部分は安定でバリエーションが生じにくいと考えられます。それをメダカの発生で調べているんです。
メダカの発生の前半と後半で発生の揺らぎがあるのではないか、ということを調べました。ボディプランの形成期が発生の中間の時期にあるので、おそらく中期の方が揺らぎが小さいのではないか、と考えられます。
近交系のメダカと野生型のメダカの発生段階での遺伝子発現のばらつきを調べるんです。遺伝子発現はその時の発生の状態を反映しているので、遺伝子の発現を見てあげるとそのばらつきが見えるだろうという予測でした。
そういうことです。
体節の形成過程で分けていて、体節が何個に別れたか、ということで前半・後半を分けています。実は、魚の卵は透けているので、その観察がやりやすいというのもポイントです。
そうなんですよー。なので、時々間違えてやり直したり、結構大変ではあります(笑)。
で、結果としては、近交系も野生型も発生中期の遺伝子発現のばらつきが他の時期と比べて小さいということが分かりました。近交系の方が野生型よりもさらにばらつきが小さいのですが、発生の中期でのばらつきが小さいということでは、近交系も野生型も変わらない、ということが分かりました。
この揺らぎが小さい時期に形成される形質は安定性が高い、ということが言えるので、集団の中で形質が保存される、あるいは進化が進んでも保存されやすい、ということがいえます。
そうですね。
そういうのが出てこなかったのか、絶滅してしまったのか分からないですけど、今のボディプランではないですね。
あの時はまだ海の中ですし、哺乳類の登場はもうちょっと後ですよね?
進化のポテンシャルが低くなってしまったんですかね。当時とは違う環境に入れてやったら違った進化をするのかもしれないですね。やってみたいですね。
祖先と現在のネズミの比較は難しいかもしれないですけど、昆虫とかで「生きた化石」とそうでないものの比較ならやれる気がしますね。あと古代魚をやってる人もいますね。
ポリプテルスとかですね。
進化の話は簡単なようで難しいんですよね。環境と遺伝と偶然と淘汰とみたいな複合的な条件である意味たまたま今の状態になっているとも言えるので、再実験みたいなことはできないし。あれ?もしかしたら時間軸的に考えると、今が哺乳類の「カンブリア大爆発」だったり?
理研OBで現在は神戸を中心に活動する事業開発人。分析化学、光学、バイオテクノロジー、ITなど幅広いバックグラウンドを持つ。理研をはじめとするアカデミアの技術・アイデアを事業にするため、アイデアを共有する場の開催から、資金調達、事業戦略立案など、さまざまな活動を行っている。
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